読書「なぜ絵版師に頼まなかったのか」

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北森鴻の作品は、ずいぶん前に「親不孝通りディテクティブ」を読んだ切りで、本作が私にとっては2作品目である。謎解きの面白さ、という点では、他の作家に大きく譲るところがあるのは否めないが、この「なぜ絵版師に頼まなかったのか」は、舞台となった明治期の雰囲気が味わえて楽しかった。

主人公となるのは、葛城冬馬。松山から東京へ奉公へ出てきた13歳の少年で、彼は東京大学で医学を教えるベルツ先生の家へ住み込み仕事をすることになった。ベルツ先生は大の日本びいき。冬馬に仕事を与えるほかに、やがては大学予備門・大学への進学もさせてくれる。
その冬馬やベルツ先生の身の回りで起きる小さな謎(とはいえ、ベルツ先生は大日本帝国が招聘した学者でもあり、国の大事にも関わってくるものもある)を、冬馬を助手に、ベルツ先生が解いていく、という連作短編である。

謎、そのものは、記憶に残らない程度のもので、これを解くという面白みはなかったが、明治とともに生まれ育った冬馬を、見守り育てるベルツ先生はじめ同僚の外国人たちの温かな視線が、生まれたばかりの近代国家・日本を見守る目と重なった。闇を抱えながらも近代化へ突き進む日本の、活力ある往時の雰囲気が楽しい読書となった。


なぜ絵版師に頼まなかったのか (光文社文庫)
光文社
2010-10-13
北森 鴻

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