読書「恐竜はなぜ鳥に進化したのか 絶滅も進化も酸素濃度が決めた」

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P.D.ウォード著・垂水雄二訳の、古生代中生代における生命進化に対する新たな説を取り纏めた「恐竜はなぜ鳥に進化したのか 絶滅も進化も酸素濃度が決めた」を読んだ。

カンブリア紀から白亜紀まで、繰り返された生命の進化は、そのときそのときの酸素濃度が大きな要因になっていたのではないか?という仮説だ。本文403ページにわたる説の中身は「地球の酸素濃度が低くなると生命の新たな形態が生じ、逆に高くなると種や目のレベルで多様性が広がる」というもの。なるほど、とうなずける内容ではあったが、さすがに同じ論旨だけで403ページを通されると少々辟易としてくる。

訳文ものの常ではあろうが、やはり読みづらい文体も、その「辟易」には少なからず影響している。例えば、本文255ページ。

ペルム紀後期に発見された動物の系統がペルム紀後期いや現在と比べてさえはるかに酸素濃度の高い時代の子孫であることを忘れてはならない。

という文章。果たして、一読で意味がとれる日本人(日本語使用者という意味です)が、どれだけいるだろうか。この文章で言いたいことは、

ペルム紀後期に発見された動物は、より酸素濃度が高い時代に発生した動物の子孫であることを忘れてはならない。

ということだ。原文から言葉を削りすぎだ、と、訳者としてのタブーにあたるのかもしれないが、意味をとりやすくする工夫は行うべきではないだろうか。まるで、翻訳サイトに英文を突っ込んだら出てきたような訳文であり、これが読みづらさを助長している。せめて・・

ペルム紀後期に発見された動物の系統がペルム紀後期いや現在と比べてさえはるかに酸素濃度の高い時代の子孫であることを忘れてはならない。

と、読点の位置を変えることぐらい行うべきであろうし、こうなるともう、訳者の能力の問題である。
訳者あとがきには、「文庫化にあたって、明らかな誤植や誤記、および意味の通りが悪い表現を何カ所か改めた。」とあったが、ほんまかいな?と思ってしまうのである。


ところで、その『訳』に関して、もう一つ言わせてもらえば、タイトルについてである。原題は『Out of Thin Air』というらしいが、これを素直に訳せば、『薄い空気から(現れしもの)』とでもなるだろうか。これが邦題では『恐竜はなぜ鳥に進化したのか』になっている。明らかに、関心をもたれるための意訳であるが、本文を読み終えても、その答はどこにも記されてはいない。・・これはいただけない。こんなとこで訳をするくらいなら、本文を読みやすくしてくれ、と思うのだが・・。

このブログで何度でも同じようなことを書くが、中身を確認できるのは読み終えた後になってしまう本という商品にあって、このような誤情報を意図的に表出するのはいかがなものか。出版文化の衰亡が言われるが、この信頼関係の崩壊を辞さない出版社の姿勢、という要素は無視できないものなのではないだろうか。


恐竜はなぜ鳥に進化したのか―絶滅も進化も酸素濃度が決めた (文春文庫)
文藝春秋
2010-10-08
ピーター・D. ウォード

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生と死の自然史—進化を統べる酸素
東海大学出版会
ニック レーン

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