読書 「白銀ジャック」

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書店で東野圭吾の文庫新刊を見かけたのでノータイムで購入。正直なところ、近作ではかつてのような切れ味は失われてきているような気がするが、私が作家名だけで購入する数少ない作家の一人である。読後になって、初めてタイトルを確認したが、・・「白銀ジャック」とは・・。恥ずかしさすら感じるベタなタイトルである。東野のナマエで売ってしまおうということか、カバーにある著者名が異常に大きい。もしかすると「白銀ジャック東野圭吾」が正しいタイトルなのかもしれない。

年の瀬迫る新月高原スキー場に脅迫メールが届いた。「ゲレンデのどこかに爆発物をしかけた」という犯人の要求額は3,000万円だ。現場責任者の反対もある中、経営陣は犯人の要求通り警察には知らせず、身代金を支払うことにする。警察に連絡したところでゲレンデを封鎖されてしまうだけで、スノーリゾートとして生き残るには風評被害が怖い、という判断だった。実はその新月高原スキー場では、1年前に女性スキーヤーの死亡事故が起きていた。その被害者の夫と息子が、スキー場ホテルに投宿したのを待っていたかのように、爆弾脅迫事件が動き出して・・・。


謎解きミステリ、というよりは、サスペンス物として読むべき作品なのだろう(文庫帯にもサスペンスと書いてあった)。事件の全容までは無理だが、犯人に関しては容易に想像がつくのだから。ネタバレ→脅迫メールの件を警察に届けない、とするスキー場経営陣の判断にはいくら何でも無理があると感じてしまうが、案の定、経営陣が事件の「一端」を握っていた。もちろん、他にも何名、何組かの怪しい人物たちは登場していて、そのあたりはラストに来て拾い上げてあり、こういうコトでした、という説明がなされている。甚だご都合主義的な設定だとは思ったが、「サスペンス」劇の裏話程度のものと理解した。

それにしても、である。改めて書くが、東野圭吾も流石に衰えてきたように感じられてならない。同じサスペンス物として比べてみても、かつての「天空の蜂」などと比べると、どうしようもないくらいに盛り上がらない。舞台設定の大小はあるだろうが、登場人物が放つ熱量、ひいては作品のエネルギーがどうしても低いように感じられてならないのだ。読者に対して威圧的ですらあったエンターテイメント性は、かなり薄れてきてしまった。そつなくまとめてはいるが、それは作家としてのテクニックが書かせているもののように思える。大著「白夜行」を一晩で読ませてくれた力は、残念ながら近年の東野に感じることはできない。
また、ある時期から、東野は「人間の再生」をテーマに据えているようにも思う。同時に、それを追うあまりに作品の面白さが、スポイルされてきているようにも感じている。作家としての信条や目的なのだから、読者としてはあれこれいう立場にはなく、「選べば」良いことだとは分かっている。分かってはいるのだが、氏の才能を惜しむ者として、氏の名前だけで本を選ぶ者として、ちょっと考え直してくれないかなぁ、と思っているのも事実だ。

・・あるいは。・・このような状況は、氏の名前だけで買う、という私のような読者のせいなのかもしれないな、とも思う。つくづく私たちは「消費」者なのだなぁ・・・と。がんばってくれ、東野圭吾!


白銀ジャック (実業之日本社文庫)
実業之日本社
2010-10-05
東野 圭吾

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    Excerpt: 白銀ジャック (実業之日本社文庫)東野 圭吾実業之日本社 今回は、東野圭吾『白銀ジャック』を紹介します。本書はいきなり文庫版での上梓です。本書の創作秘話を読んでみると、東野版『私をスキーへ連れてって.. Weblog: itchy1976の日記 racked: 2010-11-15 23:34