読書 「のぼうの城」

画像


2009年本屋大賞第2位、第139回直木賞にノミネートに評された「のぼうの城」を読了。豊臣秀吉による北条征伐の際に起きた一幕の合戦絵巻、史実を下敷きにした歴史エンターテイメントである。

秀吉の命を受けた石田三成が、北条方の支城の一つ忍城に迫る。城を守るのは成田長親。同族(従兄弟)の当主、氏長は、本城、小田原城に詰めており、城方の将兵は数少ない。石田(豊臣)方20,000に対し、成田(北条)方は、城下の百姓衆を加えても3,000。士分の者に限ると300を超える程度しかいない。それよりも何よりも、城代の氏親は「のぼう様」と呼ばれるでくの坊。馬にも乗れず、畑に出ては農民たちにも笑われる男である・・・。


冒頭部分で次々と登場人物がプロフィール紹介的に現れてくるが、もともとが脚本として新人賞を受賞した作品だからだろうか、人物像をイメージするまもなく別の人物が現れてきてしまう。一人目の印象が固まらないうちに二人目、三人目が登場してくるので、読み手としてはストレスを感じざるをえない。これが映画ならば、字幕なりをかませておけば、「あーこの人は物語の登場人物なのね」「このひとは(字幕がないから)、エピソードを語るためだけのエキストラね」と区別が容易なのだが、どう進むのか分からない小説の序盤で、ぽんぽんと人物を登場させてこられるのには、少々参った。それから、時折挿入されるトリビア的なエピソードは、削った方が良いと思う。石田光成の頭の形が遺骨調査で分かった、などの情報は小説の中では不要であろう。
また、作中では意識的にだろうが、のぼう様自身の心情や考えは表現されない。そのほかの登場人物たちが、見て聞いて感じたこととして描かれている。読者にとっては、のぼう様は本当に有能なのだろうか、それともやっぱりただのでくの坊なのだろうか、と考えることができて面白い仕掛けである。ただそれだけに、もう少し分厚く、のぼう様を巡る日常が描かれていないと、のぼう様に対する感情移入が難しい。現に、脇を固める登場人物、正木丹波守利英や酒巻靱負、柴崎和泉守らの印象の方が強く残っている。

とまあ、書評めいた事を書いてみたが、感想を述べれば、面白かった。(史実としての)結果を知っているから、ということもあるだろうが、切迫したシチュエーションのはずなのだが、軽く明るいのだ。そしてこのノリならば、のぼう様の活躍を「いやあ、ラッキーでした」で終わらせてくれた方が収まりよく終わったように思うのだが・・・。

この作品、来年映画になるようである。先行サイトをのぞいてみたら、著者である和田竜も改めて脚本参加するようである。おそらく映画用に改変される部分も出てくるだろうが(小説のままだと、主人公が立ちませぬ)、この作品の持つ軽さこそを大切にしてもらいたい。まかりマチガっても、感動方向へ振ると・・・、きっと恐ろしいことになる。

恐ろしい、といえば。本作、単行本時代から読んでみたかったのだが、価格のこともあって文庫化を待っていた。ところが・・・!やられました、奥義「文庫本上・下分け」。2冊に割るほどのボリュームはありません。


のぼうの城
小学館
和田 竜

ユーザレビュー:
人を惹きつける魅力と ...
脚本家が書く小説の希 ...
とにかく面白い!時代 ...
amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by のぼうの城 の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル


ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック